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​曜変 W12.5cm×H7.5cm
​鈴木禎三展

会  期  :  2020年1月11日(土)〜 1月26日(日)

休 館 日 :  火曜日

作家在廊日 :  全日在廊

碗の中の小宇宙
秘めたる器『曜変天目』

日本には世界に誇る宝が現存する。名は『曜変天目』。この掌(たなごころ)に収まるわずか約12cmの小さき器に人は惹きつけられる。室町時代には室町幕府三代将軍足利義満はじめ八代将軍義政や安土桃山期の織田信長、徳川家康等の名だたる偉人がその秘めたる何かに魅了された。現代人には推し量ることのできない何かがそこには存在する。
現代人ですらそこに『曜変天目』があるだけでただただ魅せられる。現代においては[碗の中の小宇宙]と評されるがごとく、器の内面には宇宙がみえる。『曜変天目』に代表される天目という器は口縁の下を絞るなどした特徴的な形で、鉄釉等で焼いたもの。足利義満の御側衆(おそばしゅう)が記した君台観左右帳記(くんだいかそうちょうき)の曜変に関する記述には 〈土之物 曜変、建盞(けんさん)の内の無上也。世上になき物也。〉とあるように珍重された。


 『曜変天目』は12~13世紀、南宋時代に中国・福建省の建窯で焼かれたといわれている。現在国宝指定された『曜変天目』の完形品は三碗。東京の静嘉堂文庫美術館蔵・大阪の藤田美術館蔵。京都の大徳寺龍光院蔵。どのような人がどういうねらいでそのような景色の器を焼いたのか焼けたのか... なにゆえ製法が伝わらなかったのか... なにゆえ日本にしか現存しないのか... 今なお多くの謎に包まれたままである。その神秘さがなお一層、現代人をも魅了する存在である。


 そんな『曜変天目』に魅了された県北津山市の作陶家 鈴木禎三(45)は17年前より独自に己の道に邁進している。日本でも異色の作家である所以は、備前焼と天目(鉄釉陶器)をこなすという事である。出身地の大阪府堺市泉北ニュータウンという場所は古墳時代に須恵器の最大生産地があった所である。幼少期より須恵器の秘めたる何かに心惹かれ、母方の祖父である愛知県瀬戸焼作家の鈴木青々(故人)の影響で陶芸に興味を持つ。高校在学時、夏休みを利用して陶芸に興じていた時に祖父が他界する。収集品(須恵器、三彩、古瀬戸、天目、ペルシャ陶器等)の整理を任された。その時の衝撃的な感動により陶芸の道を志す決意をする。最初の第一歩は生前祖父が公で言っていた「雑草の精神」を体現するため、あえてホームグラウンドである日本六古窯最東端の瀬戸焼を修業の場として選ばず、しかも著名な陶芸家に弟子入りする事も選ばなかった。選ばれた場所は日本六古窯最西端の備前焼。いつの時代においても最先端を歩んでいた陶産地の瀬戸焼。かたや〈いにしえ〉より伝統技法を守り続けている陶産地の備前焼。その備前焼の研修所である岡山県備前陶芸センターの門を1993年に叩く。翌年卒業後に備前焼窯元で陶工として従事する。1997~2000年には青年海外協力隊・陶磁器隊員としてフィリピン共和国で窯業プロジェクトに従事する。帰国後なにも縁がない津山の地に工房と窯を持つ。
『曜変天目』の神秘的存在感...謎だらけの〈ものいわぬもの〉に心惹かれ感嘆・悲哀・恋慕・哀愁などの広範囲の感動が強く呼び起された...天目は、いつかは消滅する存在でありながら、何か不変性を感じる...我々はこのような矛盾した〈もの〉に心惹かれるのか...人の〈心〉を突き動かす“天目の力”...その時より自身の『天目の道』が始まる。
作家自身の天目に対する作陶理念は〈伝世する『曜変天目』の再現は、その当時焼かれていた気候条件、社会情勢、社会環境、社会通念、同一技術の会得等々、全ての条件が合致して初めてそれが再現する為の絶対的条件である。この世にタイムマシーンが無い限り、個人的見解から再現は不可能である。故に「アキレスと亀」(俊足のアキレスは永遠に亀に追いつけないという逆説)のようであっても限りなく迫ることである。〉


 そして平成最後の年に自身が納得のいく『曜変』の天目を生み出した。その時の心境に[今は富士の樹海を抜け出して、やっと山道に辿り着いたかもしれない...]続く令和の時代に入りさらに一歩前進したかもしれない『曜変』の天目を生み出した。
[器として何か超越している〈もの〉を内包している国宝『曜変天目』におもいをいたすと、人が生み出す〈もの〉には〈いにしえ〉の人なら感じることができるであろう〈心〉〈自然〉がただただそこにはあると思う。まだまだ力不足な自身の『曜変』の天目ではあるが国宝『曜変天目』と少しでもなにか通ずる所を感じてもらえたらと切に思う。]

                           鈴木禎三

関連イベント

2020年1月19日(日) 11:00 - 16:00

抹茶席を設けます。

​一服 500円 (数に限りあり)

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